「なんだ…もう限界なのか?」 「ああ、限界だとも。これ以上は俺には無理だ」 土台無理な話だ。たった二人でこんなドでかいバケモノを相手にしようなんて、正気の沙汰じゃない。 身体はもうズタボロ。 隣のクーも、既に慢心創痍だ。 その痩躯が酷く――頼りなくて。 そして、トンでもないことを口走った。 「ならそこで見ててくれ。コイツは私がやる」 ―――寸瞬、思考停止。 そして真っ当な判断が出来る頃には、クーは武器を構えて既に突っ込もうとするところだった。 慌てて引き止める。その時だけは身体が動いた。 ――まだ、動いた。 「バカ言うな! クーもいい加減ガタガタだろ! 逃げるぞ!」 「逃げられるとでも? 私は兎も角男はいい加減足元もおぼつかないだろう?」 ああ、言う通りだ。立ち上がったのはいいものの膝はガクガク、武器もロクに持ち上げられない。 でも、次のセリフを聞いた瞬間、そんなどうでもいいことは霧散した。 「大丈夫だ、男が傍に居てくれれば刺し違えようが本望、だ。  特攻をかける。死に際は看取ってくれ  それが最後の私のたの…」 「ああ、訂正」 努めて冷静に言葉を遮る。いつもクーがそうしてるように。 手を握る。激痛が走る。そんなものはねじ伏せた。 構える。そのまま倒れこみそうになった。でもやせ我慢しなきゃ始まらない。 「まだ限界なもんか。身体はまだ動く。  …惚れた弱みだ、お前にそんな事言われちゃたまったもんじゃない。  好きなやつに言われたんだ、そっちの方が俺にとっちゃ破壊力はでかい。  ……俺が前衛に出る。バックアップ頼んだ」 「は?」 「二度は言わね。行くぞ」 ――一歩、踏み出す。 そして、疾走し 「ちょっと待て、よく聞こえなかった。もう一度頼む」 ようとしたところで、いつもの調子で声が聞こえてきた。 「…お前わかってて聞いてないか?」 つんのめった姿勢のまま、クーの方を向く。相変らず無表情に、でも少し笑ったようにこちらを見ている。 「そんなことはない、もう一度頼む」 語調はそれこそ幾度となく聞いた通りだ。全くもって真意が掴みかねる。 「…好きだって言ったんだよ!」 そして、後はいつも通り。 「そうか、私も…愛している」 「ちょwwwお前、やっぱり聞こえてただろwwww」 気付いたら、身体の痛みはとうに気にならなくなっていた。 「――気を取り直して。じゃあ、行くぞ―――目標、戦略型焼却機動兵器ANPAN TYPE-MOESU!」 「ああ、いざ――参る!!」 トントン ノックの仕方で解る。クーめ、引越し初日早々に来たな…! 「あー、開いてるぞ?」 「入るぞ、兄」 ギィ… 「……」 「どうした?」 や、だってそんなパジャマ姿で枕持って、 「自分の部屋で寝なさい、自分の部屋で」 「その要求は受けかねる。今までからの環境の変化に私は耐えられそうもない。  少しでも前と同じ環境で寝たい。兄と一緒に寝てはいけないだろうか?」 「あー、その」 今までからの環境の変化って、部屋が別々になっただけだろうが。 もっともらしいことを言って、そんなに一緒に寝たいのかー! だが折角の一人部屋だ。初日くらい満喫させてくれてもいいだろうッ…!! 「見ての通り引越し後の片付けで二人寝るスペースは無いんだが」 だが勿論それは建前だ。ダンボールを散らかしている理由の一つはただ単に自分がものぐさで整理整頓が苦手なだけで、 そしてもう一つの理由は―― 「なら手伝う。何、二人でやれば一人分のスペース位すぐ片付くだろう」 「わー! ちょい待て!」 その辺りには秘蔵の本が!! 今日こそはクーに内緒で自家発電に勤しもうと思ってたのにーー!! そして発掘される我が秘宝。 「…ああ、気が利かずすまなかった。だから私が居ては不都合なのだな」 物凄いトゲを感じるが、その通りです。 「ほら、そんなの読んじゃいけません、お兄ちゃんに返しなさい」 本を取り上げる。 そう、クーが今までは常に一緒に寝てて、自分自身を処理するのさえ一苦労だったのだ。 大体クー自身も可愛過ぎる上に血が繋がっていないもんだから、そりゃもう毎日理性を保つのに必死だったわけだが。 わけなのに――― 「だが、兄の夜のおかずなら私が担当するのも吝かではないぞ?」 「ちょwwwまwwww」 どうしてこう問題発言ばかりナチュラルにかますのか。 「何か不都合があるのか? 血も繋がっていないし何一つ問題など無いだろう?」 「お前が小学生なのが問題ありだ! いやそうじゃなくて!!」 「そうか…やはり胸が大きいのが好みなのだな、だが世にはロリコンが流行っているというではないか」 「どこでそんな言葉覚えてくるー!? そうじゃない! 俺はクー位の体型は好きだけどっていや間違い、今のなし!」 「そうか…何も問題などなかったのだな、ならば今日はもう寝よう  二人寝る場所が無いと言っていたが、それももう解決済みだろう」 何かどんどん話が進む。もう俺は無駄に耳年増な義妹のペースに振り回されるままで。そしてヤナヨカン。 「二人で一緒の布団に寝れば問題無いな。兄にだったら、私は…いいぞ?」 「そうじゃなくてーーーー!!!」 夜中に五月蝿い、いいから一緒に寝なさいと両親に叱られました。 「くーくー」 「ね、寝れねぇ…。 クーは予想通りすぐ寝ちまうし…!!」