「貴女の能力で月まで行けないかしら?」 そんな、問いが月見の席で出た。 辺りは何時も通りの酒宴で、ロクに素面な面など居ない。 自分も例に漏れず、 少しだけ、饒舌になった。 ― 秋月無空 ―    ◆ ―――結論から言うと。それは、無理ね。 だって地球と月を隔てるものは何? それは只純粋な力のみよ。 境界なんて最初から無い。 いくら境界を自由に出来るといったって、 そんなんじゃ如何しようも無いわよ。 ―――まぁ。 この地球から抜け出せるだけの力でもあれば、話は別なんだろうけど。 この地球は存在するだけで既に一種の檻なのよ。 外から入る事すら容易ではない。中から外へ出るのはもっと難しい。 オマケに厄介なのは籠と違って篭目すら無いことね。 あら、じゃあ私達は永遠に月に帰れないのかしら? そうね。昔なら月旅行なんてのは幻想の事だったわ。 だから月からの使者なんてのも存在し得たしかぐやひめが月へ還るなんてのも或いはあったのかもね。 何よ、ここに生き証人が居るのに。 生きてることは証明にならないわ。 記録されたことが証明にもならない。 不確定要素の計算は私の得意分野よ? 記憶なんてモノも経った60年如きで曖昧に出来るわよね。 ―――なら。今でも帰る事だって、 だから言ったでしょう? 昔なら月旅行なんてのは幻想の事だったと。 外の人間は頭がいいわね。境界さえ無いのなら何処まででも行けると本当に信じている。境界があれば必ず抜ける方法があると本気で考えている。 全く、この上なく――素晴らしいわ。 それと、私が月まで行けないと言ったのにはもう一つ理由があるのよ。 私は人の心が境界を作っているのならそれを超えられる。でも昔の人間と違って今の外界の人間はもう宇宙を地球の外側と考えていないわ。 何時か誰でも宇宙へ飛び出せる時が来ると頭から信じている。 …まぁ、そういう人間が出て来たのも最近のことなんだけどね。 ここが日本じゃなければ或いは偽者の月まで行けたのかもしれないわね? でも、幻想郷の住人はそうじゃないわ。 月と地球の間に決定的な境界を作っている。 そうね、でも幻想郷自体そもそも外界から隔離された場所よ。そんな所で境界弄って外に出ても精々成層圏止まりね。そうしたらそのまま地球に引っ張られて―――燃え尽きちゃうわよ? ??? 私達は飛べるのに? それに萌えるって? 燃える、よ。 外はね、勝手に人間が証明した決まり事が世の中を支配してるの。幻想郷とは勝手が違うのよ。 そう、不便ね。 ええ、不便よ。 ―――あーあ、そっか。 今頃月のイナバの仲間達は人間と殺し合ってるのかしら? さぁ? そもそも月に兎なんて本当は居ないのかもしれないわね。 貴女の話はどうもちんぷんかんぷんだわ。 そうね、貴女の考えも私にはさっぱりだわ。 ――ふふっ ――くすくすっ ――あはははっ あはははははははっ ―――月は、丁度望月。 独りきりで寂しそうに見える。